この記事でわかること
- 民間2社・公務員2自治体を往復した私が、2回とも公務員を選んだ理由
- 1回目と2回目で、転職の「決め方」は何が違ったのか
- いま民間か公務員かで迷っている人に、往復経験者が伝えたいこと
はじめまして、の方も多いと思います。私はメーカーの営業からキャリアを始めて、公務員になり、一度辞めてベンチャーに移り、もう一度公務員に戻ってきました。民間2社・公務員2自治体。履歴書だけ見れば、かなり落ち着きのない経歴です。
先に、この記事の結論を書いておきます。1回目の公務員は「ノルマの日々からの逃げ場」で、2回目の公務員は「両方を知ったうえでの選び直し」でした。同じ「公務員になる」という結論なのに、決め方の中身はまるで別物です。この記事はブログの原点として、その往復の過程を時系列で、格好つけずに書いていきます。
メーカー営業だった私が、1回目の公務員試験を受けるまで
最初に白状します。1回目の動機は、「公務員は楽そうだ」という安易なものでした。ここを飾ると記事全体が嘘になるので、当時の状況と心境を、そのまま書きます。

「ノルマはない」はずが、実質ノルマに追われる日々
社会人としての1社目は、メーカーの営業でした。入社前に聞いていたのは「ノルマはない」という言葉です。ところが働き始めてみると、「ノルマ」という表記がないだけで、実質的なノルマに追われる毎日が待っていました。
この仕組みには続きがあります。なんとかノルマを達成しても、翌年は達成額にプラス10%が課せられるのです。頑張れば頑張るほど、翌年のハードルが上がっていく。ゴールテープを切った瞬間に、次のテープが少し先へ張り直される感覚です。「このままでいいのか」という自問自答が、日ごとに大きくなっていきました。
なぜ数ある選択肢から公務員だったのか
この苦しい日々を脱する方法はないか。そう考えていたとき頭に浮かんだのが、「公務員=楽」という、いま思えばずいぶん安易なイメージでした。当時の私が持っていた公務員像は、その程度の輪郭だけです。中で働く人が何に喜び、何に消耗しているのかは、まったく知りませんでした。
それでも私は、そのイメージを頼りに自治体の採用試験に応募します。動機として立派かどうかで言えば、明らかに立派ではありません。ただ、この安易な入口が、結果的に私のキャリア全体を動かすことになりました。
安定を手にしたはずの公務員を、なぜ辞めて民間に戻ったのか
ここが、この記事でいちばん正直さが試される章です。公務員への転職について発信している私は、その公務員を一度、自分の意思で辞めています。
書類整理の日に湧いた「自分は何やってるんだろう」
誤解のないように先に書くと、公務員の環境そのものには満足していました。残業代はきちんと出るし、有給休暇も取りやすい。ノルマに追われた営業の日々と比べれば、働く環境に文句はありませんでした。
転機は、ある日の書類整理でした。淡々と紙をさばきながら、ふと感じてしまったのです。「こんな誰でもできる仕事をやっている、自分は何やってるんだろう」と。世の中では転職が当たり前になり、自分の強みを特化させてキャリアを築いている人がいる。それなのに、自分は何者にもなれていない。この焦りが、辞めたい気持ちの正体でした。
後輩くんえっ、あんなに苦労して公務員になったのに、辞めちゃったんですか?安定してるのに、もったいなくないですか?
そう思いますよね。実は環境には満足していたんです。それでも「何者にもなれていない」という焦りのほうが勝ってしまった。安定していることと満たされていることは別物だと、このとき初めて知りました。
ITベンチャーのキラキラと、「自由」への憧れ
押し出す力が「焦り」なら、引っ張る力は「憧れ」でした。当時の私の目を奪ったのは、IT業界のベンチャー企業のキラキラです。あの世界に行けば「自由」が手に入る。そう信じて、私は転職活動を始めました。
ただ、現実は甘くありませんでした。公務員からの転職活動は想像以上に厳しく、何社も落ちる日々。「公務員は潰しがきかない」と聞いていた通りの厳しさを、身をもって実感しました。この苦戦の中身は、それだけで一本になる話なので、別の記事で正面から書きます。
民間2社目(ベンチャー)で得たもの・思い知ったこと
民間2社目はベンチャーでした。そして、この「外に出た経験」がなければ、いまの私は公務員の価値を語れなかったと思っています。比較できて初めて、見えるものがあるからです。
転職を一度もしていない人は、いまの職場を何とも比べられません。一度だけの人も、比較対象は「前の職場」ひとつです。私は役所とベンチャーという両極端を続けて経験したことで、はじめて「働く環境を測る物差し」が自分の中にできました。この物差しが、のちの2回目の決断を支えることになります。
戻ってみて「よかった」と素直に思えたこと
会社選びには、営業時代の反省を織り込みました。憧れの入口はキラキラでも、探して入社したのは、ノルマを求められず、対話による関係づくりがメインだという企業。ノルマの日々の二の舞だけは、避けたつもりでした。
入ってからの手応えは、確かにありました。同期の中で最も多くの担当を任され、期待に応えるうちに自信がついていく。この自信は、いまも私の土台になっています。外に出て得たものは、間違いなくありました。
「想像と違った」「窮屈だ」と感じた瞬間
ただ、皮肉な現実も待っていました。「ノルマを求められない」はずの会社で、気づけば結局、ノルマに追われる日々になっていたのです。業務の性質上、労働時間がそのまま売上になる構造で、数字を積むには自分の時間を差し出すしかない。同期で最も多くの担当を持つ私は、最も多くのノルマを背負っていました。
そして気づけば、公務員時代より自由がない。「自由」を目指して外に出たはずの私が、公務員時代を懐かしむようになっていました。ルールと手続きの窮屈さと、数字と時間に追われる窮屈さ。問題は「どちらが楽か」ではなく、どちらの窮屈さなら自分は引き受け続けられるかだったと、このとき初めて理解しました。
このとき肌で感じた民間と公務員の違いは、「5つのギャップ」として別の記事に詳しくまとめています。往復目線の比較だけ先に読みたい方は、そちらからどうぞ。
2回目、公務員に戻ると決めた瞬間。1回目と何が違ったか
そして、2回目の決断が来ます。結論から書くと、2回目に公務員を選んだときの私は、1回目とは別人のような決め方をしていました。
「もう一度公務員」が頭に浮かんだ瞬間
一度辞めた場所に戻る。言葉にすれば数秒ですが、頭に浮かんでから腹が決まるまでには、それなりの距離があります。ましてや私は、公務員の良い面も退屈な面も中から知っている人間です。イメージだけで「やっぱり公務員がいいな」と戻れるほど、無邪気ではいられませんでした。
転機は、転職を考える中で「自分の強みは何か」を改めて棚卸ししたことでした。考え抜いた結論は、最も強みを発揮できる場所は公務員だ、というものです。1回目は「楽そう」で選び、2回目は「自分の強みが活きる場所」で選んだ。同じ公務員でも、基準がまるで違います。
後押しもありました。公務員時代の知人から聞いた「近年、公務員は人手不足」という情報。そして外に出たからこそ、公務員の仕事は人々が生きるうえでの基礎、いわばインフラを作る仕事だと再認識できたことです。商売なら成立しないような仕事も、公務員なら人のためにできる。中にいた頃には見えなかった価値が、外からははっきり見えました。
1回目は逃げ場として、2回目は選び直しとして
2回の決断を並べたとき、いちばん大きな違いは「判断材料の質」でした。1回目の私が持っていたのは、「楽そう」というイメージと、ノルマの日々から抜け出したい一心だけ。裏を返せば、公務員を選んだというより、苦しさから逃げ込む先がたまたま公務員だったのだと思います。
2回目は違います。公務員の中で働き、外にも出て、両方の良さと痛みを身体で知ったうえでの判断です。比べる材料が、想像ではなく実体験になっている。この差は決定的でした。
| 1回目の公務員転職 | 2回目の公務員転職 | |
|---|---|---|
| 出発点 | ノルマの日々から抜け出したい一心 | 両方を経験したうえでの実感 |
| 公務員の情報 | 「楽そう」という外から見た輪郭だけ | 中で働いた実体験 |
| 決め方 | 消去法に近い「逃げ場」探し | 強みに基づく「選び直し」 |
| 心境 | この苦しい日々を脱したい | ここでやっていくという覚悟 |
この章のポイント
転職の質は「何を選んだか」より「どう選んだか」で決まる。実体験という比較材料を持って選び直した2回目は、同じ公務員でもまったく別の選択でした。
試験の受け直しへの不安と、家族の反応
きれいごと抜きで、現実的なハードルもありました。もう一度、あの試験勉強をやり直すのかという重さです。ただ、この不安は考え方ひとつで軽くなりました。受ける先は何箇所もあるし、今年に限らず、何度でも受けられる。一発勝負ではないと気づいた時点で、不安はかなり払拭できました。
もうひとつの発見が、「公務員は潰しがきかない」の誤解です。たしかに民間への転職では苦労しました。でも、別の市区町村の公務員という道がある。公務員の経験は、公務員の世界の中でなら十分に潰しが効く。この発見は、戻る決断の大きな安心材料になりました。
家族は、公務員に戻ることに賛成でした。転職活動は延べ3回に及びましたが、反対を押し切った武勇伝はありません。公務員という職業の社会的な安定は、家族にとっても安心材料になる。むしろ後押しがあったからこそ、前向きに転職と向き合えました。
幸い、経験者採用の枠はここ数年、自治体の規模を問わず広がっています。「一度公務員を辞めた経歴」も、伝え方しだいで面接の武器になります。私が面接で何をどう話したのかは、面接対策の記事で細かく書く予定です。
往復してわかったこと。いま「民間か公務員か」で迷っているあなたへ
最後に、往復してわかったことを整理します。ここで書きたいのは「公務員が正解」という話ではありません。両方を中から見た人間として、迷っている人に判断の材料を渡すための章です。



ぶっちゃけ聞きますけど…民間と公務員、結局どっちがいいんですか?両方知ってる先輩の答えが聞きたいです。
その質問には「どっちが上」という答えがないんです。私は2回公務員を選びましたが、2回目の理由は「自分の強みが最も活きる場所」だったから。あなたの強みで考えれば、答えは変わるかもしれません。大事なのは優劣ではなく、自分側の基準です。
2回の転職に後悔はあるか。「回り道したから得たもの」は何か
履歴書だけを見れば、私の経歴は明らかに遠回りです。メーカーの営業から役所へ、ベンチャーへ、そして生活保護のケースワーカーへ。まっすぐ公務員になって勤め続けた人と比べれば、失ったものも確かにあります。
それでも「後悔はあるか」と聞かれたら、答えははっきりしています。3回の転職に、後悔はありません。その時々では後悔した瞬間もありました。ただ、転職を繰り返したことで、自分の中でどっしり構えられるようになった。多少のことでは揺れなくなりました。
回り道したからこそ得たものも、はっきりしています。周囲が抱くような不満は、いまの日々の生活にはほとんどありません。両方を知っているから、今ある幸せに目を向けられるし、物事をポジティブに考えられる。そのマインドのおかげで、自分だけでなく、周囲も少しだけ幸せにできている気がします。
後悔というテーマは、それだけで一本書けるほど深いので、別の記事で正面から掘り下げます。
心配症の私が迷っている人に一番伝えたいこと
私は昔から心配症で、転職のたびに調べ尽くし、悩み抜いてから動いてきました。以前はこの性格を弱点だと思っていましたが、いまは違う見方をしています。心配症の人はリスクを見落とさないし、調べる体力がある。決めるまでは遅くても、決めたあとの納得度が高い。転職のようなやり直しのきかない決断では、これは弱点ではなく持ち味です。
そのうえで、当時の私と同じように迷っている人に、一番伝えたいことはこれです。公務員になりたい人、人生を変えたい人にとって、公務員への転職は間違いなくそのきっかけになります。「まずやってみる」でいい。行動する人は、ほんの一部です。だからこそ、行動した人にこそチャンスが訪れます。
動機は何でもいい、と本気で思っています。残業代が出ない。有給が取りにくい。年収を上げたい。結婚したい。モテたい。どれも立派な動機です。私の1回目の動機は「楽そう」でした。それでも人生は動いた。その悩みを公務員なら解決できるかもしれない、という可能性に目を向けてみてください。
最後に、これだけは断言できます。迷えるのは、選択肢を持っている人だけです。民間か公務員かで悩んでいる時点で、あなたには両方の可能性がある。悩む時間を「まだ決められない自分はダメだ」と責める材料にせず、判断材料を集める期間だと捉えてください。私はその期間を2回通って、いまここにいます。
【定点観測】いまの公務員生活はどうか(四半期ごとに追記)
この見出しは、少し変わった使い方をします。記事を書いた時点の「正直」は、時間が経てば古くなる。だからこの場所に、四半期ごとに「いまの公務員生活はどうか」を日付つきで追記していきます。良いことも、そうでないことも、そのまま積んでいくつもりです。
「2回選んだ人間が、その後も公務員を選び続けているか」。これ自体が、このブログでいちばん嘘のつけない一次情報だと思っています。ブックマークして、ときどき覗きに来てください。次の追記でお会いしましょう。
この記事で公務員転職が気になり始めた方へ
民間と公務員、どちらが合うかは「情報の量」ではなく「判断の軸」で決まります。私が2回の転職で見つけた判断のヒントを、他の記事でも正直に書いています。


ともゆた|2回、公務員を選んだ現役公務員
30代・子育て中。民間2社と公務員2自治体を経験し、公務員から民間へ、民間から公務員へと回り道をしてきました。心配症なので、転職のたびに調べ尽くして悩み抜くタイプ。同じように悩む人の判断材料になるように、実体験を正直に書いています。
