この記事でわかること
- 民間2社・公務員2自治体を経験した私が、本当に驚いた5つのギャップ
- 「定時で帰れる」「残業代が全額出る」というレベルではない、生活と心の変化
- 「公務員は潰しがきかない」という不安への、現役公務員からの答え
民間2社と公務員2自治体を行き来してきた私が、まずお伝えしたい結論はひとつです。5つのギャップには戸惑うことも窮屈に感じることもありましたが、振り返ると、どれも私が「公務員になってよかった」と思える理由になっています。
ここから、生活・仕事・人間関係・キャリアの4つの軸で、私が実際にぶつかった5つのギャップを順番にお話しします。最後の5つ目は、転職を迷っている人にとっていちばんの不安「公務員は潰しがきかないのでは?」への、私なりの答えです。

ギャップ①|定時で帰れて、残業代が全額きちんと支給される
転職してまず驚いたのが、定時退庁が「普通のこと」として運用されていて、残業した分はきちんと残業代として給料に乗ってくることでした。私が在籍した自治体・部署での話ですが、民間時代の私にとっては、生活の景色が変わるレベルの衝撃です。

「夜は自分の時間」が前提になっている世界
民間時代は、残業が当たり前でした。しかも給料には見込みの残業代が含まれていたので、それを超えた分は実質サービス残業です。ところが公務員の職場には、定時で帰ることに寛容な人が多く、「仕事が終わったら帰っていいよ」と声をかけられます。「本当に定時で帰れるのか」と驚きました。もちろん毎日が定時ではありませんが、残業した日は、その分の残業代がきちんと出ます。
後輩くんえ、残業した分だけ申請したら、本当にその分だけ給料に乗るんですか?民間しか知らないと、ちょっと信じがたいんですけど…。
実は私も「本当に全額もらえるの!?」と驚いた側です。初めて申請した残業代がそのまま給与明細に乗ってきたとき、「あ、これが本当の労働対価か」と。民間時代に染みついた自分の感覚が、どれだけ歪んでいたかを思い知らされました。
いちばん驚いたのは、申請の刻みの細かさでした。最初は1時間単位で残業代がつくことに驚いたのですが、私が在籍した自治体では、1日単位で見れば1分から申請できました。さすがに1分で出したことはありません。私は30分を超えたら申請することにして、35分なら35分と、5分刻みで書いていました。申請した時間が、そのまま数字になって返ってくる。申請の刻みや運用は自治体によって違うので一般化はできませんが、少なくとも私の職場ではそうでした。
時間を返してもらえると、人生の組み立てが変わる
夜の時間が自分のものに戻ると、暮らしが静かに変わっていきます。民間時代は、早く帰れた日も数字のことが頭から離れず、数字を忘れるようにお酒を飲んでいました。公務員になってからは、そのお酒の量も減りました。家族との夕食、子どもの寝る前の時間、ゲームなどの趣味、平日の飲み会。次の転職活動に時間を使えたのも、夜の時間があったからです。
もちろん配属先によっては忙しい時期もあります。それでも、土台のところで定時退庁と残業代の支給が制度として機能している安心感は、民間時代には手に入らなかったものでした。生活の主導権が自分の手元に戻ってくる感覚、と言い換えてもいいかもしれません。
ギャップ②|意思決定は遅い。でも、夜眠れる仕事になる
2つ目のギャップは、仕事の進め方です。意思決定が、信じられないほどゆっくりです。ただし、これも働くうちに見え方が変わっていきます。


案件ひとつに、何段階もの確認が入る
民間のころは、その場のメンバーで「じゃあこうしよう」と決めて走り出すのが当たり前でした。公務員では、担当の起案が係長、課長補佐、課長、部長と回覧されて、ようやく一歩進みます。
細かな言い回しの修正を何度も繰り返して、1日が溶けたこともあります。心の中では「どっちでもいいのでは」と思っていました。こちらから出した提案も、すぐには通りません。
遅さの正体は「全員でミスを潰す仕組み」
ただ、慣れてくると、この遅さは単なる非効率ではなく、ミスを未然に潰すための仕組みだと分かってきました。担当ひとりでは見落としていた点を、係長や課長が拾ってくれる場面も確かにありました。根回しの大切さに気づき、上司の考え方がわかってくると、先回りして動けるようにもなります。
公務員の仕事は、ひとつのミスが議会や報道で問われる世界です。だからこそ、複数の目で確認する仕組みになっているのです。
民間時代は、夜になっても「この提案でよかったのか」「予算を達成できるのか」と、頭の中で仕事が回り続けていました。公務員に来てからは、月々の数字に追われるわけではないので、夜ぐっすり眠れるようになりました。
この章のポイント
意思決定は確かに遅い。でもその遅さは「全員でミスを潰す仕組み」として機能していて、結果として夜眠れる仕事になる。スピードを失う代わりに、自分一人で失敗を抱え込まない世界です。
ギャップ③|同期が、クラスメイトのような仲間になる
3つ目のギャップは、人間関係です。公務員に来るまで予想していなかった種類の驚きで、いまでは「公務員になってよかった」と私が一番強く感じている部分のひとつです。


社会人になってからできた、クラスメイトのような仲間
研修で同期と顔を合わせたところから、「これは社会人というより、クラスメイトだな」と感じる空気がありました。社会人になったはずなのに、学生時代の延長線にいるような感覚です。
民間時代の同期は、仲間であると同時にライバルでもありました。同じ数字を競い合う相手だからです。公務員の同期には、そうした競い合いの空気がほとんどありません。
「◯期」で見られる、気心の知れた仲間
もうひとつ違うのが、同期がひとまとまりの仲間として見られることです。公務員の世界では、「◯期」という単位で見られることがあります。上司から冗談まじりに「お前の同期、なんとかしてよ」と言われることもあるくらいです。同期は、気心の知れた仲間なのです。
私の同期とも、いまだに定期的に集まっています。職場の同僚というより、公私で付き合う友人に近い関係です。社会人になってから、ここまでの関係が長く残る職場は珍しいと感じます。
| 民間の同期 | 公務員の同期 | |
|---|---|---|
| 関係 | 仲間であり、数字を競うライバル | クラスメイトのような仲間 |
| 周りからの見られ方 | 個人の成績で見られる | 「◯期」のまとまりで見られる |
| 付き合い | 仕事を通じた関係が中心 | 飲み会やレジャーなど公私で続く |
ギャップ④|民間に戻って初めて気づいた、「公務員の方が自由」だった
4つ目のギャップは、私が一度公務員を辞めて民間に戻ったときに、ようやく気づいたものです。「公務員=制約が多い」「民間=自由」というイメージは、ある角度から見るとまるで逆だったという話です。


民間に戻って気づいた「失った自由」
民間に戻って最初に窮屈さを感じたのは、休みの取りづらさよりも先に、いつ・どこで・何をしているのかを明確に把握される職場だったことでした。2社目はそういう管理のしかたで、公務員時代はそこまで細かく把握されることはなかった。同じ「働く」でも、背中に視線があるかないかで、1日の疲れ方がまるで違います。



えっ、公務員の方が自由って、ちょっと意外です…制約だらけのイメージしかなかったので。
私もそう思って一度民間に戻ったんです。たしかに公務員には、ルールに縛られる窮屈さがあります。でも、やり方や根回しを工夫すれば、その中でけっこう自由に動けました。民間に戻ってみると、数字と時間に縛られ、やり方の工夫にも厳しくて、思うように動けない場面のほうが多かったんです。
もうひとつが、仕事のやり方の自由度です。公務員は手続きも様式も、ある程度やり方が決まっています。ただ、その決まったやり方の中に自分の工夫を入れる余地は、思っていたよりずっとありました。担当している業務の集計方法や、業務そのものの設計を組み替えることは、上司に相談すれば割と自由にできた。型は決まっているけれど、その中で自分なりに動かせる幅がある、という感覚です。意外にも、民間の2社目のほうが、やり方の工夫には厳しい会社でした。
民間に戻ってからは、毎月の数字と目の前の予定に生活が引っ張られました。自由だと思っていた民間のほうが、実は数字と時間に縛られていたのです。
「自由」の定義をどこに置くか
どちらを自由と感じるかは、人によって違います。家族との時間、健康、長く働ける状態を大事にしたい人にとっては、公務員はかなり自由な働き方です。私は民間に戻って初めて、自分が大事にしたかったのは、こちらの自由だったと気づきました。
この章のポイント
どちらにも縛りはある。それでも私の場合、やり方の工夫も、時間と生活の自由も、公務員のほうが大きかった。家族・健康・自分のリズムを大事にしたい人ほど、この自由が効いてきます。
ギャップ⑤|「公務員は潰しがきかない」は誤解。他自治体に動けるという最大の保険
最後のギャップは、転職を迷っている人にとっていちばん大きな不安への答えです。「公務員になったら、もう辞められない/辞めたら詰む」というイメージは、半分は正しく、半分は完全な誤解でした。
「辞めたら詰む」と本気で思っていた頃の自分
1回目の公務員時代、私自身、「公務員を辞めたら潰しがきかない」と本気で思っていました。だからこそ民間に戻ると決めたときは相応の覚悟が要りましたし、公務員の経験を活かして、もう一度別の自治体に入れるとは、その時点では考えてもいませんでした。
他自治体への「公務員→公務員」ルートは、思った以上に開いている
考えが変わったのは、求人の中身を知ったときでした。公務員を経験している人を求めている求人が、確かに存在すると知ったんです。民間と公務員では、仕事のやり方も進め方も違う。その違いこそが、自治体が公務員経験者を採りたがる理由になっているという構図が、ようやく腹落ちしました。
背景には人手不足もあります。人が足りない状況の自治体が増えていることは、1回目の公務員時代の同期から聞く話でもはっきり伝わってきました。求人票を眺めているより、同じ現場にいた人間の話のほうがずっとリアルです。
公務員になったあとの動き方には、次の5つの選択肢があります。番号は順位ではなく、あくまで並列です。


他自治体に移るだけでなく、国の機関や関連団体へ現職のまま出向する働き方も制度として用意されています。同じ法令、似た組織文化のなかを動くので、引き継ぎのコストは民間転職に比べて段違いに低い。
住む場所を変えたい、家族の事情で地元に戻りたい、いまの自治体の風土が合わない。こうした理由で、自治体だけ替えるという働き方が成立します。私自身は、いったん民間に出てから別の自治体に入りました。公務員を経験していたことで、民間からもう一度公務員になる壁は、想像よりずっと低かったというのが率直な感想です。
公務員という働き方には、「もし合わなくても、同じ業界の中で職場だけ替えられる」という保険が組み込まれています。民間転職の「合わなければ業界ごと変える」という重いリスクとは、まったく性格が違うものです。
私が一度公務員を辞めて民間に戻り、もう一度公務員に戻ってきた経緯と心の揺れは、「公務員→民間→公務員。2回公務員を選んだ理由を現役の私が正直に書く」でじっくり書いています。「合わなかったらどうしよう」という不安が大きい人は、そちらも参考にしてみてください。
民間から公務員のギャップに関するよくある質問
Q1. 民間から公務員に転職すると、年収は下がりますか?
私の場合、1回目に公務員になったときは下がりました。ただ、公務員の給料は、前の職歴を経験年数として数えて決まります。たとえば正社員を3年していた人は、公務員として3年勤めた人と同じ給料です。評価も結果的に大半が「標準」になるので、中途で入っても、新卒から勤めている人と基本的に同じ給料になります。
Q2. 民間出身者は、公務員の中で浮きませんか?
浮くことはないと思います。どちらかと言えば、公務員の仕事の進め方に自分が面食らうほうです。私も「公務員の仕事は、こんなに細かいのか…」と驚きました。一方で、中途で入った人は、民間で身につけたコミュニケーションや機転を活かせるので、活躍しやすい土壌があると感じています。
Q3. 公務員に転職しても、合わなかった場合はどうすればいい?
選択肢は思ったよりあります。同じ自治体内での部署異動、他自治体への経験者採用、国の機関や関連団体への出向など、「公務員の中で働き方を組み替える」ルートが普通に存在します。外から見ているうちは大きく見える不安ですが、中に入ってみると、想像よりずっと柔軟に動ける世界です。
まとめ|5つのギャップは、「公務員になってよかった」と思える理由になった
- 定時退庁と残業代の支給で、夜の時間が自分に戻ってくる
- 承認までのフローは長いが、そのぶん数字に追われず夜ぐっすり眠れる
- 同期はクラスメイトのような、気心の知れた仲間。公私で付き合う関係が続く
- 決まったやり方の中に工夫を入れる自由と、時間と生活の自由がある
- 「潰しがきかない」は誤解。公務員経験者を求める求人は確かにある
転職に不安があるのは、真剣に考えている証拠です。私自身、心配で調べ尽くしてから動くタイプですが、それでも2回、公務員という働き方を選びました。迷っている時間も含めて、あなたの転職活動はもう始まっています。この記事が、次の一歩の判断材料になればうれしいです。
この記事で公務員転職が気になり始めた方へ
民間と公務員、どちらが合うかは「情報の量」ではなく「判断の軸」で決まります。私が2回の転職で見つけた判断のヒントを、他の記事でも正直に書いています。


ともゆた|2回、公務員を選んだ現役公務員
30代・子育て中。民間2社と公務員2自治体を経験し、公務員から民間へ、民間から公務員へと回り道をしてきました。心配症なので、転職のたびに調べ尽くして悩み抜くタイプ。同じように悩む人の判断材料になるように、実体験を正直に書いています。
