この記事でわかること
- 民間から公務員への転職を2回経験した私が実際に踏んだ5つのステップ
- 働きながらの情報収集・試験対策・退職交渉の現実的な進め方
- 1回目と2回目で、動機と戦い方がどう変わったか(2回受かってわかったこと)
「公務員に転職しよう、とは決めた。で、何から手をつければいいのか」。この記事は、その段階にいる方のために書いています。私は民間から公務員への転職を2回経験しました。1回目は「公務員なら楽そうだ」という安易な動機で、2回目は自分の強みから逆算して選んでいます。
先に結論を書きます。民間から公務員への転職は、「情報収集→受験先の絞り込み→試験対策→応募・面接→内定から退職・入庁」の5ステップに分解すれば、働きながらでも完走できます。制度の一般論をなぞる記事にはしません。2回この道を歩いた私が、それぞれのステップで実際にどう動いたかを軸に、順番にお渡しします。
民間から公務員への転職は、この5ステップで進んだ(全体像)
まず全体マップです。細かいテクニックより先に、ゴールまでの道のりを一枚で頭に入れてしまうのが、遠回りに見えて一番の近道でした。

5ステップの全体像と、私の場合のスケジュール感
2回の転職でやったことを並べ直すと、道のりはきれいに5つに分かれます。
| ステップ | やること | つまずきやすいポイント |
|---|---|---|
| 1. 情報収集 | 受験資格・日程・試験内容を集める | 調べすぎて動けなくなる |
| 2. 受験先の絞り込み | 年齢・日程・生活圏で候補を決める | 「どこでもいい」で選ぶと面接で詰まる |
| 3. 試験対策 | 筆記・論文を仕事と並行で進める | 全科目を完璧にやろうとする |
| 4. 応募・面接 | 書類作成・面接準備 | 民間の転職と同じ感覚で数字だけ推す |
| 5. 内定〜退職・入庁 | 退職交渉・引き継ぎ・入庁準備 | 退職の切り出しが遅れる |
民間の転職と決定的に違うのは、ステップ3の「試験対策」が挟まることと、選考のスケジュールを自分で選べないことです。民間なら行きたい企業に今日エントリーできますが、公務員試験は募集時期が決まっています。私の感覚では、受けられる機会は年に2回ほどあることが多いものの、1回逃すと次まで数ヶ月は待つことになります。この「待ったなしのカレンダー」が、公務員転職の時間感覚のすべてを支配します。
最初に決めるべきは「いつの試験を受けるか」だった
手順の起点は、志望動機でも自己分析でもなく「いつの試験を受けるか」でした。試験日が決まれば、出願期限が決まり、勉強に使える残り時間が決まり、いまの職場にいつまで在籍するかの見通しまで、芋づる式に決まっていくからです。
試験日を決めないままの情報収集は、いくら続けても「検討」のままです。心配症の私は、ここを曖昧にしたまま調べ続けて、時間を溶かしかけました。最初の一手は、受ける試験の日付をカレンダーに書き込むことです。
ステップ1・2|情報収集と受験先の絞り込み(心配症の私はこう調べた)
最初のつまずきポイントは「どこを受けるか決められない」です。ただ、実際にやってみると、受験先は好みで選ぶ以前に、条件でほぼ自動的に絞られていきます。

受験先は、条件で足切りしてから「軸」で絞る
私が使った物差しは3つです。年齢・受験資格(経験者採用の枠には職務経験の年数の要件があります)、試験日程(日程が重なる自治体は併願できません)、そしてどこにある自治体か(通えるか、そこで暮らしたいか)です。
ただ、この3つは「受けられるかどうか」の足切りなので、通しても候補はあまり絞られません。それでも先にやる価値はあります。「全国の自治体からどう選ぶか」という途方もない問いが、「受けられる先の中からどう選ぶか」に変わるからです。本当に絞り込むのは、次に決める「軸」です。
同じ3つの物差しを使っても、1回目と2回目では軸にした基準が違いました。1回目は勉強に特化していて、私が受験した当時、専門科目が課される自治体を外して選んでいます。2回目の軸は、経験者採用や社会人採用の枠があること。公務員としての実績を評価してもらえる場所を選ぶ発想に変わりました。
心配症の私が「調べすぎて動けない」を抜け出した基準
それでも私は、すぐには動けませんでした。倍率、過去問、面接の傾向、合格者の年齢層。調べれば調べるほど不安の解像度だけが上がって、出願に踏み出す手が止まる。心配症の人なら、この感覚が分かると思います。
抜け出せたのは、調べ物を「決めるための調査」と「安心するための調査」に分けてからです。決めるための調査は、年齢や受験資格など客観的な基準を確かめる作業。安心するための調査は、「受ける先は何箇所もあるし、来年でもいい」と自分に納得させるためのものでした。この2つを分けたことで、ようやく出願に手が伸びました。
ステップ3|働きながらの試験対策(勝負は「やらないこと」の決め方)
ここが在職中の読者にとって、一番重たい区間だと思います。結論を先に書くと、働きながらの試験対策は「何をやるか」より「何をやらないか」を決めた時点で、半分終わっています。

後輩くん働きながらって、本当に受かるんですか?勉強に専念している受験生には、時間の面でどうやっても勝てない気がして…
私は2回とも在職中に受けて、2回とも受かりました。心配症なので、仕事を辞めて転職活動に専念するという選択肢がそもそもなかったんです。時間では専念組に勝てない。だから範囲を絞る判断力と、民間で積んだ職務経験で勝負しました。
働きながらの勉強は「やらないことを決める」が先だった
見落とされがちなのが、試験科目は自治体と枠によって違うということです。「公務員試験=膨大な専門科目」というイメージで尻込みしているなら、まず受ける枠の募集要項で試験科目を確認してください。何を捨てるかは、そこが分からないと決められません。
私が勉強に使っていたのは、仕事終わりと通勤電車、それに週末です。もともとある隙間に押し込んだ形でした。また、専門科目が課される自治体は候補から外していたので、受験先を選んだ時点で、やらない範囲は決まっていました。
勉強時間が多かったのは1回目です。2回目は経験者採用の枠で、試験は基礎的な教養の内容が中心だったからです。
もうひとつ意識していたのは、「この日は勉強しない」と先に決めておくことです。「やろうと思っていたけど、やっぱりやめた」を減らしたかったからです。やらない日を決めてしまえば、その日は堂々と休めます。
正直に言うと、私は通信講座を使わず、本と過去問だけで勉強しました。でも今は、通信講座を使えばよかったと思っています。
ひとりで勉強していると、「何をどこまでやればいいのか」が分かりにくいからです。最近は、SPI(民間企業の採用でも使われる適性検査)を取り入れる自治体も増えていますが、独学だと対策の仕方も見えにくい。通信講座なら、自治体ごとの出題の傾向をふまえて教えてくれるので、遠回りしにくいはずです。教材の選び方や週ごとの進め方は、働きながらの勉強法として別の記事で書きます。
ステップ4|応募書類と面接(民間経験は「押す中身」で決まる)
筆記を通ったら、次が応募書類と面接です。経験者採用で合否を分けるのは、むしろこちらだと思っています。伝えたいのは、民間経験は「行政向けに翻訳」して、押す中身を選んで初めて武器になるということ。経験者採用の面接官が知りたいのは、あなたが民間で何を積んできて、それを行政のどの場面で使えるのかです。


数字は「成果自慢」ではなく「論理的に話す」ために使う
注意したいのは、民間の転職面接と同じ感覚で「成果の数字」を並べても、評価の物差しが違うことです。行政の仕事は、利益を出すことをゴールに置いていません。私が公務員の面接で数字を使ったのは、成果を誇るためではなく、論理的に話せる人だという印象を持ってもらうためでした。
私が押したのは、コミュニケーション能力と適応能力
では、何を押すのか。私が前に出したのは2つです。ひとつはコミュニケーション能力。ただ、この言葉を掲げるだけでは伝わりません。誰に、どんな場面で、どう対応したのかを具体的に話して、ようやく「同僚にもお客様にもしっかり対応できる人だ」と伝わります。
もうひとつは柔軟性と適応能力です。公務員は、部署異動を「転職」に例える人がいるくらい、担当する仕事が変わります。民間で環境が変わったときにどう立て直したのか。その一場面を語れると、強く届きます。
意識の高さを訴求するのは逆効果だった
民間から来る人ほど外しやすいのが、意識の高さのアピールです。改革者として売り込みたくなる気持ちは分かります。ただ、実際に敬遠されるのは、デジタル化を急に進めようとする姿勢や、周りを気にせず新しいことを提案する姿勢でした。民間経験は「変えられます」ではなく、「合わせたうえで力になれます」の順で出すほうが通ります。
新しい提案が歓迎されないわけではありません。まずは、いまある仕事をきちんと回せる人だと伝わるかどうか。順番の問題です。2回目の面接では、質問の裏で、次のような点を確かめられている印象がありました。
- コミュニケーションが取れるか
- 周りとぶつからないか
- 心身ともに健康か
- 公務員の組織になじめるか
- 即戦力として働けるか
どれも、民間での具体的な経験で答えられることです。
面接で実際に何を聞かれ、どう答えたのかは、経験者採用の面接対策としてもう一段掘り下げる予定です。
ステップ5|内定から退職・入庁まで(一番気を使ったのはここ)
2回の転職で一番神経を使ったのは、試験でも面接でもなく内定後でした。「いまの職場を円満に出て、入庁初日を万全の状態で迎える」までが転職です。


退職の切り出しタイミングと伝え方で失敗しないために
入庁の時期は自治体によって違い、4月や10月が多いものの、それ以外の時期もあります。入庁日が決まるのは合格して提示されたときで、そこから退職交渉に使える時間も決まります。だから段取りは前倒しです。いつ・誰に・どの順番で切り出すかを、合格発表の前に決めておきましょう。成り行きに任せると、最後の1〜2ヶ月で職場と気まずくなります。
私が切り出したのは、1回目は辞める4ヶ月ほど前、2回目は3ヶ月ほど前でした。引き継ぎを終えることと、有給休暇を使い切ることの両方をカレンダーに収めようとすると、私の場合はこれくらいになりました。
伝え方で心がけたのは、結論から先に、撤回の余地を残さない言い方で伝えることです。「実は迷っていまして」と切り出すと、そこから引き留め交渉が始まって消耗します。お世話になった感謝と、すでに決定事項であることは、両立させて伝えられます。
入庁の準備より、前職を全うするほうを軸にした
正直に書くと、入庁に向けた準備は特にしていません。何を準備すればよいのか、そもそも分からないからです。代わりに大事にしたのは、前の職場で担当していた仕事を最後まで引き継ぐことでした。そのうえで、入庁してからどんな気持ちで働くかを考えていました。
もうひとつ決めていたのは、有給休暇を使い切ることです。ただ、すんなりとはいきませんでした。1回目も2回目も、有給を取ることには嫌な顔をされています。それでも「有給休暇は使わせていただきたい」と強く伝え、どちらのときも認められました。早めに切り出していたのは、引き継ぎと有給の両方をカレンダーに収めるためでもあります。使い切った休みは、気持ちを切り替える大事な時間になりました。
この章のポイント
合格はゴールではない。退職の切り出しは合格発表の前に段取りを決めておく(私は3〜4ヶ月ほど前に伝えた)。内定後の軸は、次の職場の予習より前職を全うすること。有給は使い切る前提で逆算し、必要なら自分から伝えて通す。
2回受けてわかった、1回目と2回目で変わったこと・変わらなかったこと
最後に、2回くぐった私だから書ける話をします。踏んだ手順は同じ5ステップでも、1回目と2回目では、動機も戦い方も別物でした。


1回目は「逃げ」、2回目は「逆算」。志望動機の質が違った
1回目の私はメーカー営業でした。入社前に「ノルマはない」と言われて入ったのに、実態は数字に追われる毎日。達成しても翌年の目標は当たり前のように+10%です。この苦しさから抜けたい一心で、「公務員なら楽そうだ」という安易な理由で自治体に応募しました。動機が、行き先ではなく逃げ道だったんです。
2回目は逆です。「自分の強みが最も発揮できるのは公務員だ」という結論から逆算しました。営業で積んだ、相手の事情を聞き取って関係をつくる力が、行政のどの場面で効くのか。それを自分の言葉で言えるようにしてから、経験者採用の枠に出願しています。「楽そうだから」という動機は面接で一段掘られただけで崩れますが、逆算でつくった動機は、掘られるほど中身が出てきます。
公務員としての経験も武器になりました。業務で多くの方を担当してきたので、初対面の相手とも関係をつくれることを、具体的な経験で示せたからです。
臨み方も違いました。1回目は楽だと思い込んでいたので、強い動機がありません。2回目は、「なぜ自分は公務員を選ぶのか」という問いにいちばん時間をかけました。一度辞めた人間がもう一度戻る以上、ここを突き詰めないと、面接官より先に自分が納得できません。
合格が分かったときの気持ちも、1回目と2回目でまったく違いました。1回目は、勤めていた会社の休憩室で、ドキドキしながら自分の番号を探しました。番号を見つけたときは、「まさか自分が公務員になれるなんて。本当に行動してよかった」。すぐに今の妻に伝えました。2回目に思ったのは、「公務員の経験があってよかった」です。役所の中の事情が分かっていたので、面接でも質問の意図をつかみやすかったからです。
不安の消し方も変わった。「1回で決める」をやめた
2回目に効いたのは、「受ける先は何箇所もあるし、今年に限らず何度も受けられる」と考え方を切り替えたことです。1回の試験に人生を賭けると思うから怖くなる。もうひとつ外れたのが「公務員は潰しがきかない」という思い込みです。別の自治体の公務員なら潰しが効くと気づいてから、受験先の見え方が変わりました。
2回とも変わらなかった、受かる人の動き方
一方で、2回くぐって「これは変わらない」と確信したこともあります。試験日から逆算して、計画どおりに動くこと。どこにある自治体か(通えるか、そこで暮らしたいか)を軸に受験先を選ぶこと。そして、なぜ民間から公務員なのかを、自分の言葉で語れること。動機がどう変わっても、合否を分けていたのはこの3つでした。



2回も受かった人の話を聞くと、逆に「自分は1回で受かるのかな」って不安になってきました…
不安なままでいいんです。私も心配症で、2回とも不安を抱えたまま出願しました。ただ、不安を理由に立ち止まるのと、不安なまま手だけは動かすのとでは、1年後に立っている場所がまるで違います。
3つの中でも、「なぜ民間から公務員なのか」はとくに重要です。ここが固まっていないと、面接の深掘りで必ず止まります。私がなぜ一度公務員を辞めてまで、もう一度公務員を選んだのか。その決め方は、このブログの原点として「公務員→民間→公務員。2回公務員を選んだ理由を現役の私が正直に書く」に書きました。
民間から公務員への転職に関するよくある質問
Q1. 何ヶ月前から動き始めるべきですか?
受ける試験の日付から逆算するのが唯一の正解です。出願は試験の数ヶ月前に締め切られることが多く、「思い立ったときには今年の分が終わっていた」が一番よくある失敗です。まず受けたい自治体の直近の実施日程を調べて、そこから勉強と退職準備の計画を引いてください。
Q2. 働きながらでも間に合いますか?
間に合います。私は2回とも在職中に合格しました。ただし「全部やる」計画では間に合いません。受ける枠の試験科目を確認して、配点と伸びしろで優先順位をつけ、やらない範囲を先に決めることが条件です。
Q3. 何歳まで可能ですか?
年齢要件は自治体と枠によって異なるので、「何歳まで」という共通の線引きはありません。社会人としての職務経験を受験資格にした経験者採用の枠もあり、私自身、30代でその枠を受けて2回目の転職をしています。年齢を理由に諦める前に、受けたい自治体の受験資格と年齢要件を自分の目で確認するほうが先です。
Q4. 転職活動は今の職場に隠して進めるべきですか?
内定まで伝えない前提で動くのが安全です。公務員試験は応募から結果まで数ヶ月かかるうえ、途中で不合格になる可能性もあります。早く伝えるメリットはほぼありません。
手続きの面では、ヒヤリとしたことは一度もありませんでした。しんどかったのは気持ちのほうです。面接日に有給を取ることに罪悪感があって、「バレてるんじゃないだろうか」と勝手な妄想をしていました。実際には何も起きていないのに、ずっと落ち着かない。心配症とは、だいたいそういうものです。
実務で慎重に考えたのは、試験や面接で休むための有給の取り方だけです。そこだけは先に段取りを組んでいました。
まとめ|手順は5ステップ。最初の一手は「いつ受けるか」を決めること
- 民間から公務員への転職は「情報収集→絞り込み→試験対策→応募・面接→退職・入庁」の5ステップ
- 受験先は年齢・日程・生活圏で足切りし、そのうえで自分の「軸」で絞り込む
- 働きながらの試験対策は「やらないこと」と「やらない日」を先に決める
- 面接で押すのはコミュニケーション能力と適応能力。意識の高さの訴求は逆効果
- 退職の切り出しは合格発表の前に段取りを決める。有給は自分から伝えて使い切る
- 1回目と2回目の差は制度ではなく志望動機の質。逆算でつくった動機は掘られるほど強い
転職の手順は、突き詰めれば「試験日を決めて、逆算して、淡々とこなす」だけです。特別な才能は要りません。心配症で調べすぎて動けなくなる私が、2回完走できた道です。この記事を閉じたら、まず受けたい自治体の直近の試験日程を調べてみてください。カレンダーに日付が入った瞬間から、あなたの転職は「検討」から「進行中」に変わります。
この記事で公務員転職が気になり始めた方へ
民間と公務員、どちらが合うかは「情報の量」ではなく「判断の軸」で決まります。私が2回の転職で見つけた判断のヒントを、他の記事でも正直に書いています。


ともゆた|2回、公務員を選んだ現役公務員
30代・子育て中。民間2社と公務員2自治体を経験し、公務員から民間へ、民間から公務員へと回り道をしてきました。心配症なので、転職のたびに調べ尽くして悩み抜くタイプ。同じように悩む人の判断材料になるように、実体験を正直に書いています。
