この記事でわかること
- 「公務員を辞めたい」と思ったとき、実際に辞めた私が何をどう整理したか
- 辞めて民間に行った結果、何がよくて、何が想定と違ったか
- 「辞める・残る」以外の第三の答えと、今日からできる3ステップ
この記事を書いている私は、1回目の公務員時代に本気で「辞めたい」と思い、実際に辞めて民間に転職しました。そしてその後、もう一度公務員に戻っています。辞めたい気持ちも、辞めた結果も、戻る道も、全部を自分の身体で通ってきました。
先に、この記事の立ち位置をはっきりさせておきます。私はあなたに「辞めるな」とも「辞めろ」とも言いません。「辞めたい」という気持ちは、抑え込む対象ではなく、分解して調べる対象です。当時の私が何をどう考えて決断したのか、その思考プロセスをそのまま置いていきます。
私が「公務員を辞めたい」と思った瞬間
最初に伝えたいのは、公務員を辞めたいと思うこと自体は、珍しくも恥ずかしくもないということです。周りからは「安泰だね」と見えていたはずの1回目の公務員時代、私は確かにそう思っていた一人でした。
辞めたい理由は、ひとつじゃなかった
先に意外な事実から書きます。待遇への不満は、ありませんでした。残業代はきちんと出るし、有給休暇も取りやすい。ノルマに追われた民間営業時代と比べれば、働く環境には満足していました。それでも、「辞めたい」はやって来ました。
きっかけは、ある日の書類整理でした。淡々と紙をさばきながら、ふと思ってしまったのです。「こんな誰でもできる仕事をやっている、自分は何やってるんだろう」と。顔を上げれば、世の中は転職が当たり前になり、自分の強みを特化させてキャリアを築いている人たちがいる。それなのに、自分は何者にもなれていない。この焦りが、私の「辞めたい」の正体でした。
待遇に満足していたからこそ、仕事内容と自己成長への物足りなさが際立ったのだと思います。「給料が安い」のような一言の不満ではないぶん、人にも説明しにくい。説明できない違和感は塊のまま膨らみ、冷静な判断から遠ざけます。
「辞めたい=甘え」と結びつける人は多い。でも私は違った
辞めたい気持ちが出てきたとき、多くの人が次に自分へ向けるのが「これは甘えじゃないか」という疑いです。公務員は外から見れば手放す理由のない仕事に映るので、口にすること自体に罪悪感がつきまとう。検索窓に「公務員 辞めたい 甘え」と打ち込んだことのある人は、相当な数いるはずです。
ただ、当時の自分を正直に振り返ると、私は「甘え」だと思ったことが一度もありませんでした。どちらかといえば攻めの転職です。いまの自分から成長して、より成功している自分になりたい。その動機で外へ出ました。
根っこにあったのは、何者でもない自分への焦りだったと思います。仕事はある程度できている。それでも「このままでよいのか」という考えが消えなかった。逃げたい気持ちより、進みたい気持ちのほうが強かったんです。
だから、あなたにも「甘えかどうか」の判定に時間を使ってほしくありません。甘えか本気かを決めても、状況は1ミリも変わらない。必要なのは判定ではなく分解です。
辞める前に、私が紙に書いて整理した3つのこと
私は昔から心配症で、感情の勢いのまま退職届を出せない人間です。だから辞める前に、「自分は何が嫌で、何を求めているのか」を言葉にする時間を取りました。あのとき考えたことは、3つに整理できます。

嫌なのは「仕事」か「環境」か「自分」か、を分解する
最初にやるのは、「何が嫌なのか」の切り分けです。同じ「辞めたい」でも、中身は3種類に分かれます。仕事そのものが合わないのか。いまの部署や人間関係という環境が合わないのか。疲れや生活の変化など、自分側に原因があるのか。
この3つは、有効な打ち手がまったく違います。仕事そのものが嫌なら、辞めることが解決に近づく。環境が嫌なら、異動で解決する可能性がある。自分側に原因があるなら、転職しても同じ悩みを次の職場に持ち運ぶことになります。
私の場合、結果ははっきりしていました。嫌だったのは環境ではありません。待遇に不満はなく、引っかかっていたのは仕事の中身と、この先の自分のキャリアでした。整理の末に見えた「求めているもの」は2つ。自分の強みを特化させてキャリアを築くこと、そして自由になることです。
それは辞めたら解決するのか、異動でも解決するのか
切り分けができたら、書き出した理由の一つひとつに「辞めたら解決するか。異動でも解決するか」をぶつけます。公務員には、民間よりはるかに強力な「異動」というカードがある。数年ごとに仕事内容も人間関係も丸ごと変わる制度を、中にいると当たり前すぎてカードだと認識しません。
後輩くん辞めたいと思ったら、もう「辞めるか我慢するか」の二択だと思ってました…。異動で解決するかなんて、考えたこともなかったです。
私も当時は二択で考えていました。ただ、自分の「辞めたい」を整理してみると、それは部署ではなく、キャリアの築き方そのものに向いていた。もし理由が部署に向いているなら、異動という手が残っています。
もちろん、異動は万能ではありません。希望が通るとは限らないし、「組織の仕組みそのものが嫌だ」なら異動では解決しない。大事なのは、理由の一つひとつに「異動で消えるか」の印をつけること。つけ終わると、自分の「辞めたい」が組織に向いているのか、部署に向いているのかが見えます。
私の「何者にもなれていない」という焦りは、部署が変わっても消えない種類のものでした。だから向かう先は、外になります。当時目を奪われていたのは、IT業界のベンチャー企業のキラキラした働き方。逃げるためではなく、「自由」を目指すという前向きな動機で転職活動を始めました。
辞めた後に「戻る道」があるかまで調べておく
これは正直に白状します。当時の私が、できていなかった整理です。「もし民間が合わなかったら、公務員に戻る道はあるのか」を、辞める前に確かめていませんでした。
だからこそ、これから決断するあなたには先に調べてほしいのです。経験者採用の存在、受験できる年齢、募集の頻度。ここまで確かめておけば、「辞める」は崖から飛び降りる決断ではなく、引き返せる道を確認したうえでの前進になります。
この章のポイント
「辞めたい」は塊のまま扱わない。仕事・環境・自分に切り分けて、「辞めたら解決するか」「異動でも解決するか」「戻る道はあるか」の3つを紙の上で確かめる。
実際に辞めて民間に行った結果、どうだったか
私は整理の末に、実際に辞めて民間に移りました。ここからは「辞めた結果」の話です。よかったことも、想定と違ったことも、両方そのまま書きます。
辞めてよかったと感じたこと
まず、辞めたこと自体を「失敗だった」と思ったことはありません。移った先では、同期の中で最も多くの担当を任されました。期待に応えるうちについた自信は、いまも私の土台です。そして何より大きいのは、「公務員の外の世界を自分の身体で知った」という事実そのものでした。
隣の芝生は、想像している限り永遠に青いままです。実際に隣の庭に立ったことで、青く見えていた部分とそうでもなかった部分を、自分の目で確かめられました。
辞めても消えなかった悩み・想定と違ったこと
一方で、辞める前の自分に教えてあげたい事実もあります。悩みは、辞めたら消えるのではなく、中身が入れ替わるということです。
| 辞めて変わったもの | 辞めても変わらなかったもの |
|---|---|
| 仕事の中身とスピード感 | 働くこと自体のしんどさ |
| 職場の人間関係 | 自分の性格・考え方の癖 |
| 組織のルールや慣習 | 家計や将来への不安(形を変えて残る) |
| 評価のされ方 | 「このままでいいのか」と考える癖 |
このことを、私は出口でいきなり学びました。公務員からの転職活動は想像以上に厳しく、何社も落ちる日々。「公務員は潰しがきかない」と聞いてはいましたが、その通りの厳しさでした。
ようやく入った2社目は、営業時代の反省から、ノルマを求められず対話による関係づくりがメインだという会社を選んだつもりでした。ところが結局はノルマに追われる日々です。労働時間がそのまま売上になる構造で、数字を積むには自分の時間を差し出すしかない。気づけば公務員時代より自由がありませんでした。
自由になりたくて辞めたのに、辞めた先で自由を失う。これが、私の1回目の転職の正直な総括です。悩みは消えず、中身が変わっただけでした。辞めた後の「後悔したこと・しなかったこと」は、別の記事で正面から書いています。
それでも私は、もう一度公務員に戻った
そして私は、民間で働いた末に、もう一度公務員に戻りました。「辞めたい」で検索してたどり着いたあなたに一番読んでほしいのは、実はこの章です。
民間に出て初めて見えた、公務員という仕事の価値
役所の中にいた頃の私は、自分の仕事を「誰でもできる仕事」だと思っていました。外に出て初めて、その見え方が変わります。公務員の仕事は、人々が生きるうえでの基礎、いわばインフラを作る仕事。商売としては成立しない仕事でも、人のためにできる。数字を追い続けた民間の日々があったからこそ、この価値が輪郭を持ちました。
転機は、転職を考える中で「自分の強みは何か」を改めて棚卸ししたことです。考え抜いた結論は、最も強みを発揮できる場所は公務員だ、というものでした。ちょうどその頃、公務員時代の知人から「近年、公務員は人手不足」という情報も耳に入ります。
誤解しないでほしいのですが、これは「だから辞めるな」という話ではありません。外に出たから見えたものがあった、という事実の話です。1回目と2回目の決断で何が違ったのかは、別の記事に全部書きました。
「戻る選択肢がある」と知っているだけで、心はかなり軽くなる



えっ、一度辞めた公務員に戻れるんですか?辞めたら二度と戻れないものだと思ってました…。
私もずっと「公務員は潰しがきかない」と思い込んでいました。でも民間で働くうちに、別の市区町村の公務員という道があると気づいたんです。この発見が、戻る決断を一気に軽くしてくれました。
経験者採用の枠は、ここ数年多くの自治体で広がっています。年齢要件も緩やかになり、30代・40代で受け直す人は珍しくありません。もう一度試験を受ける負担はありますし、必ず受かる保証もない。それでも「辞める=公務員人生の終わり」ではないという事実は、いま悩んでいる人の肩の力を抜いてくれます。
片道切符だと思うから、決断が重くなる。往復できる道だと知っていれば、「一度外を見てくる」という選び方もできます。
いま辞めたいと思っているあなたへ|私ならこう整理する
最後に、いま辞めたいと思っているあなたが今日からできることを整理します。答えを渡すのではなく、判断の主導権をあなたに返すための章です。
今日からできる3ステップ(書き出す→期限を決める→外の選択肢を知る)
- 書き出す:辞めたい理由を全部紙に書き、仕事・環境・自分に切り分けて、「異動で消えるか」の印をつける
- 期限を決める:「次の異動まで」「半年後」など、判断の締め切りを自分で決める。期限のない悩みは、消耗だけが続く
- 外の選択肢を知る:民間の求人や経験者採用の制度など、外の世界の情報を集める。すぐ動くためではなく、比較の物差しを持つために
この3つに共通するのは、「辞める・辞めない」を今日決めなくていいということです。材料がないまま気持ちだけで決めると、辞めても残っても、あとで自分の選択を疑うことになります。
「辞める」「残る」以外の第三の答えもある
私の答えは、結果的に「辞めて、外を見て、戻る」という往復でした。二択で悩んでいた頃には、存在すら知らなかった第三の答えです。異動希望を出して環境を変える。期限を切って、残りながら準備する。いまの自治体が合わないだけなら、別の自治体に移る道もある。二択に見える問題ほど、分解すると選択肢が増えます。
辞めたくて悩んでいた頃の自分に声をかけるとしたら、伝えたいことは2つです。ひとつは、動機は何でもいいということ。年収を上げたい、結婚したい、モテたい。どんな動機でも、現状を変えたい気持ちに立派も甘えもありません。もうひとつは、「まずやってみる」でいいということ。行動する人はほんの一部で、だからこそ行動した人にチャンスが訪れます。
往復した今だから言えるのは、遠回りは無駄にならないということです。私は回り道をしましたが、そのおかげで今ある幸せに目を向けられるようになりました。
「公務員を辞めたい」に関するよくある質問
公務員を辞めたいと思うのは甘えですか?
私自身は、当時「甘え」だと思ったことがありません。むしろ攻めの転職でした。そもそも甘えかどうかを判定しても、状況は変わりません。判定の代わりに、辞めたい理由を仕事・環境・自分に分解してみてください。分解された理由は検討材料になりますが、「甘え」という言葉は思考を止めるだけです。
一度辞めた公務員に、もう一度なれますか?
なれます。私自身が実例です。多くの自治体に経験者採用の枠があり、民間経験を評価する流れはむしろ強まっています。年齢要件や試験内容は自治体ごとに違うので、気になる自治体の採用ページで最新の要項を確認してください。
まとめ|「辞めたい」は、分解すれば判断できる材料になる
- 辞めたい気持ちは、塊のまま抱えず、まず分解する
- 「甘えか」の判定に時間を使わない。私の場合は逃げではなく攻めの転職だった
- 嫌なのは仕事か、環境か、自分か。「異動で解決するか」まで切り分ける
- 辞めても悩みは消えず、中身が入れ替わる
- 一度辞めても、経験者採用で戻る道がある。辞めるは片道切符ではない
「辞めたい」と検索したこと自体を、後ろめたく思う必要はありません。それは現状を変えたいという意思の、最初の形です。私は辞めて、外を見て、戻ってきました。だからこそ、辞める人にも残る人にも、それぞれの正解があると知っています。紙に書いて選んだ答えなら、あなたは納得できます。
この記事で公務員転職が気になり始めた方へ
民間と公務員、どちらが合うかは「情報の量」ではなく「判断の軸」で決まります。私が2回の転職で見つけた判断のヒントを、他の記事でも正直に書いています。


ともゆた|2回、公務員を選んだ現役公務員
30代・子育て中。民間2社と公務員2自治体を経験し、公務員から民間へ、民間から公務員へと回り道をしてきました。心配症なので、転職のたびに調べ尽くして悩み抜くタイプ。同じように悩む人の判断材料になるように、実体験を正直に書いています。
